釧路市出身の長倉洋海さんが「じゅう箱のスミ」から、地球のすみ―アフガニスタンの子供たちの姿を、今号から連載で報告します。ほら、子供たちの笑顔を見て。わたしたちにできることは何だろう。
小さな発見 ――今、自分にできること
ヒンズークシ山脈の山間にある小学校。生徒数は百五十人で先生は六人。生徒は近隣の村々から山路を何時間もかけて登校してくる。
今日は、一年生のゼケルラーが顔を真っ赤にして、息急切って学校に駆け込んできた。坊主頭に、桃のようなホッペ。かわいい頬が傷だらけなのは、木の上で胡桃をとっていたからだという。
子供たちの朝は早い。ゼケルラーも五時には起きて、羊や牛を連れて放牧に出る。険しい山の斜面をわずかの草を求めて移動する。いつもは朝食の準備が終わってからすぐ交替に来てくれるお母さんが今朝は遅れて、少し慌てた。家で朝食をかきこむなり、家を飛び出した。
子供たちは、同年代の仲間たちと一緒に新しい知識を吸収できる学校が楽しくてたまらない。でも、家族に病人が出たり、農繁期で忙しくなると学校を休むしかない。それでも、授業を受ける時は真剣だ。教科書が三人に一冊しかなくても、鉛筆がちびていても気にしない。授業は国語、算数、宗教…ゼケルラーが好きなのは体育だ。昨年、支援の会がサッカーボールを届けてくれたが、山に囲まれた学校には運動場がないから、岩だらけの道でボールを追いかけた。
山間の生活は厳しい。川で泳いでいて、落石で足を切断した同級生もいるし、薪を拾っていて、戦争中に敷設された地雷を踏んだ用務員のおじさんもいる。それでも、子供たちが生まれた村が大好きだ。
そんな子供たちがそれぞれの夢に向かって羽ばたけるようにと私たちは支援の会を設立した。その報告を続けていければと思う。
写真家・長倉洋海さんが20余年にわたるアフガニスタンでの取材活動を通して出会った、パンシール渓谷ポーランデ地区の子供たちの教育支援を目的として、2004年2月に設立した非営利団体です。
2002年6月、長倉さんが訪れた時、子供たちは窓ガラスも扉もない教室で、地面に座り、教材もほとんどありませんでした。会では机やいすの購入、教育物資の提供、教員給与の補助などの支援を行っています。
支援の協力は一口年会費3000円(10年間で3万円)。
年数回の会報を送ります。
問い合わせは:FAX. 042-345-7805
山の学校支援の会 公式ホームページ
http://www.h-nagakura.net/yamanogakko/
長倉洋海(ながくら・ひろみ)。1952年釧路市生まれ。
世界の紛争地を訪れ、そこに生きる人々を見つめてきた。
代表作に「獅子よ瞑れ―アフガン1980―2002」。
2004年9月にNHKテレビで放映された、出身校・釧路市立共栄小学校を舞台とした「課外授業ようこそ先輩―世界に広がれ笑顔の力」が、カナダ・バンフのテレビ祭最優秀賞を受賞。
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