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【VOL.72】 車いすマラソンボランティア編・「手を貸してあげることじゃない」


 8月28日、晴天。ピーカンのまぶしい日差しを受けキラキラ光る車輪が、一斉に走り出した。この夏も釧路に全国から車いすアスリートたちがやってきた。「釧路湿原全国車いすマラソン大会」。道内外から集まった選手は約120人。その走りがもちろん大会のメインだけれど、一方で取材班の目を引いたのが大会の裏方の10代の若者たちの姿。今どきの若者たち、車輪の向こうには何が見えたのかな?競技場のスミから炎天下リポート!


少年ランナーに笑顔の伴走



沿道での声援から給水、交通整理など参加ボランティアは約900人。この半分近くが10代の若者たちだ。
 午前9時30分。釧路市民陸上競技場。スタートラインに並ぶ選手たちの中で、少年ランナー「まーちゃん」の横にぴったり寄り添い、笑顔で声をかけ続ける女の子。ゆっくりゆっくり進むまーちゃんの前に顔を向けて立ち、自分は後ろ向きに歩き、目を合わせながら励ましの声をかけていく。
 「お姉ちゃん?」と思っていたら、星園高校からのボランティア、3年の佐々木絵里さん(18)。
 1時間余りかけて2?をしっかり完走した「まーちゃん」こと白糠学園の松本政彦君(17)。ゴールまで佐々木さんの笑顔が伴走してくれた。
 「一生懸命な選手のみなさんの姿を見て、障がいのある方への支援って、すぐに手を貸してあげることじゃないって思いました。少しずつでも自分の力を出しきることができるように声をかけ見守ることが、わたしの役割だと思いました」(佐々木さん)


苦しさ知ってわかること



 アスリートたちに混ざってかなり苦しそうに車輪をこぐ若者たち。もう20年も全校応援を続けている武修館高校(前緑ヶ岡高)から、健常者の部に出場した生徒たちだ。
 「思ったよりずっと苦しい。去年はプラカード持って『優勝目指して』なんて声かけてたけどすごく無責任だったと思った。一生懸命走ってるとちょっとした坂や段差がすごく怖い。車いすの大変さが体で分かりました」と真っ赤な顔で話してくれたのは2年の小室香奈さん(16)。

「来年もまた来るよ」



 若者の姿はボランティアだけじゃない。帯広からの参加、小学6年の東辻和俊君(11)は今年で出場6年目。「釧路の大会は若いボランティアの人がいっぱいいて、仲良くなれて面白い」。目配せした2人の高校生のお兄さんたち、レースでは和俊君に完敗しかなり悔しそう。別れ際「来年もまた来るよ」と和俊君。
 成長した姿にきっと来年また会える―そんな気がして笑顔になる取材班だった。



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