釧路湿原の植物の秘密や、地域の歴史を教えてくれる展示が満載の市立博物館。立ち寄ったこの日、玄関で迎えてくれたのは「サケの赤ちゃんが元気に育ってるの、見てって」という、我が子を自慢するかのような、誇らしげな二つの笑顔。えっ!博物館ってサケの赤ちゃんまで育ててたっけ?育ての親は、博物館友の会会員のボランティアさん。「こんな小さくても、一生懸命生きる命があること、みんなに見せたいの!」。5日の釧路川への放流を目前に、小さな命の奮闘を応援する、とってもアツイ「お母さん」だ。
「卵から赤ちゃんが出てくる瞬間を見たくて、もうくるかなって思ったらワクワクして3時間も4時間もトイレにも行けないの―」。
まるでイクラのようにピッカピカに目を輝かせながら水槽を見守るのは、博物館友の会の柴野美幸さん(48)。釧路シャケの会が、釧路川でのサケの稚魚放流に向け、毎年市民に公募する、稚魚の「里親」に、会として応募。生命の神秘を博物館を訪れる人たちにも見せようと、博物館ロビーで卵を預かった3月から、毎日休まず通い、餌を与え、水を取り替え、観察日記をつけ―と、せっせと「子育て」に励む。
「毎日ね『他の里親の子より、おっきくなるんだよ〜』って声かけてんの。うちの子に一番立派になってもらわないと。親バカだね―。ガッハッハ」と、豪快な笑い声がすがすがしい、一緒に子育てに取り組む高橋則子さん(68)。
「中にはね、競争に負けて死んでしまうのもいるけどね。それが自然界の成り立ち。子供たち、いや、大人たちにもね、そういう自然の厳しさも、この水槽の世界から感じてほしいわね―」。
そんな高橋さんの言葉を聞くと、小さな水槽が、命の教科書のようにも見えてきた。
「わたしたちは専門知識なんて勉強してません、ホントの素人。でも、こんな普通のおばさんでもできることがある。先に難しく考えちゃうと何もできないでしょ。自然の理屈抜きの楽しさを、もっと沢山の人に知ってほしいです!」。柴野さんのそんな誘いが聞こえたのか、「どうしたら入会できるんですか」と女性がやってきた。小さな種まき、ちゃんと芽が出ている。
張られた子供たちの観察記録。中には、観光で訪れた道外の子供たちのものもある。鎌倉の小学2年生の男の子は「気づいたこと。おなかのよこに点がついていた。えらがとうめいだった。がんばっていきてください」とイラストつきで。きっと、生まれて初めて会ったサケの赤ちゃんから、生きる一生懸命さを感じたんだ。
普通のおばさんたちの奮闘は、ヒトの卵までも、しっかり育てている。
名前から「研究者の会」と誤解されがちですが、柴野さん、高橋さんのような一般市民の自然活動を、博物館がサポートしてくれる会なんです。春採湖畔で11月まで毎月第4日曜日に開かれる「探鳥会」、第3土曜日の「草花ウォッチング」への参加のほか、湖畔の植物調査ボランティアなども行い、専門の先生のちょっとしたアドバイスも受けられます。
自然初心者大歓迎!
問い合わせは:0154-41-5809 博物館へ
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