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じゅう箱のスミ

2006.NOV

VOL.11


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名人の引きだし

名人 File Number 11

ドサンコ名人

酪農家・鶴居村瀬川貴志さん

吹きっさらしの原野、「ここいら一帯はかつて軍馬の育成をしていたんだ」。そう言って部屋の壁を眺める瀬川名人。壁には色褪せた当時の写真が所狭しと飾られている。この地で4代目の後継として凍てつく風に頬を赤くしながら酪農に取組む名人。傍らにはいつも馬がいた。
入植時代から、馬はこの地の生活を支えてきた。「もちろん、ぼくはそんな時代は知らない…」、ただ生まれた時から馬と一緒だった。

「馬のいない生活は考えられない」。よく馬にスキーを引かせて遊んだ。物心ついた時にはもう馬に乗れていた。「コツなんてないよ。またがったらあとは馬がなんとかしてくれる」。特別な存在じゃない、家族みたいなもの。

小学校4年生の時、祖父の鶴雄さんと一緒に阿寒の山を馬で登った。振り落とされないように必死でしがみつく。気づくと絶景の場所に運ばれていた。

祖父・鶴雄さん

鶴雄さんは時代とともに必要性が失われ次第に数を減らしていく「どさんこ」の血統継承に奮闘した人。馬の世界では権威のある神賞を受賞している。名人はそんな祖父の背中を見て育った。「ジジはすごいよ」。寝ている時と食事の時以外は大抵馬場にいて馬と話をしていた。種付け、そして調教…。調教は冬にする。原野が深い雪のクッションに被われている季節。「…それだけ危険な仕事ってこと」。

「ぼくは、名人なんかじゃない。特別馬が大好きってわけでもない。もっと馬について詳しく喋れる人はいっぱいいるよ」。そう言って照れながら馬と戯れる姿がとてもしっくりと感じた。そこには開拓の時代から続く人と馬との関係(絆)がまだ生きていた。(酒田桜子)


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