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じゅう箱のスミ

2005.AUGVOL.08

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名人の引きだし

名人 File Number 008

アコーディオン名人

合唱団アンラコロ・内山 博さん

り〜んご〜の花ほころび…」の懐かしいロシア民謡「カチューシャ」が名人の指先から飛び出す。もちろん暗譜。アコーディオン独特の愁いを含んだ音色と共に、60年代から70年代の日本の若者音楽文化を引っ張ってきた情景が、眼前に彷彿とわき上がる。

アコーディオン歴、うたごえ運動歴ともに42年。内山名人は文字通り「手八丁口八丁」、月に一度訪問するお年寄りの施設では、軽妙なトークも人気だ。90歳のおばあちゃんも、名人の伴奏で歌い出す。

根が目立ちたがり屋。18才の時、うた声喫茶で目にしたアコーディオンに「これは目立てる」と思った。鏡に鍵盤を映しながら独学で演奏法を身につけた。念願かないかなり目立ったが、「悲しい事に『アコーディオンの人ですね』とは言われるが名前を言われる事はついになかった―」と残念がる。

現在の愛器は4台目。イタリア製で80万円!!「こんなの安い方で、高いのは数百万円する」と軽くいなされた。

アコーディオンの難しさは気持ちがすぐに音に表れることだ。機嫌が悪い時は音もしっかり機嫌が悪い。「自分のかあちゃんより扱いづらいよ」

40年来の親友、アンラコロ団長伊藤俊雄さんとロシア民謡「くわばたけ」を演奏してくれた。記者は感動の拍手を送ったが、終わった途端二人は「このやろう、アコーディオンの音が大きすぎて俺の声が聞こえなかったんでないか!」「うるせー、もっと大きな声を出せ。もうろくは早すぎるぞ!」。

ここにも碁敵の世界が広がってきたようである。(三井裕)


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