4月1日、友達の強君(22)が社会人デビューする。本誌が街に配られる頃にはもうスーツ姿のはずだ。15歳の少年時代から彼を知るわたしは今、我がことのようにドキドキしている。
地元の大学入学後にチャレンジ隊に加わった。彼には「車いす」っていうちょっとした個性がある。そのためそれまでアルバイトもしたことがなく、活動範囲はごく限られていた。イベントのチラシ配りに「生まれて初めてボランティアをしました!」と目を輝かせた顔、障がい者施設訪問の後「重度障がいの方に声をかけることができなかった。自分も障がい者なのに僕には差別の心があると気づいた」と言ってきた深刻な顔が忘れられない。
わたしは「世間を教えてやる!」なんて気分になって、釧路湿原、アイスホッケー観戦、テレビ出演…と色んな場面に引っ張り回した。しかしうかつだった。若者の成長は非常に早い―。
最近、彼にしてやられることが多いのだ。本誌印刷前の校閲では、誤字、脱字、表現の誤りをズバズバ指摘する。彼を「世間知らず!」と叱咤し続けてきたわたしは、この仕返しに舌打ちするが、おかげで誤植のない紙面が完成する。
今号のイギリス出身のカウェルさんの取材では、得意の英語を駆使した通訳に助けられた。わたしも大学の英文科卒だが会話はボディーランゲージ専門。これまた彼にしてやられかなり悔しかった。さらに悔しいことに、こうした成長はわたしがあちこち連れ回したこととは関係なく、彼自身が自分の努力で身につけたものだ。
「人を育てる」とよく言うが、最終的に自分を育てるのは自分の努力でしかない。ただどんな環境で育つかで人は変わる。わたしたち大人が若者にすべき支援は、おせっかいな説教じゃなくて、楽しくのびのび育つための環境を用意することなんだと憎たらしい程かしこく成長した彼を見て思う。
少年が青年へと育っていく過程に立ち会える機会なんて、家族以外ではそうないはずだ。これぞ市民活動の醍醐味!スーツ姿ですっかりおじさんになった強君が、おばあちゃになったわたしを手助けしてくれる姿を想像し、一人、ニンヤリする。
(じゅう箱のスミ編集長・チャレンジ隊代表・佐竹直子)
Photo:右から今号に登場するカウェルさんと初取材の田村美菜子さん、通訳として取材を助っ人してくれた佐々木強君
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