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じゅう箱のスミ

2005.NOV

VOL.05


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名人の引きだし

名人 File Number 005

ベーコン名人

あやしいおじさん探検隊・三井裕さん

「日本人は本当のベーコンを知らない」。三井名人が悔しげにパイプをくゆらした―。

ベーコン。辞書には「肉を塩漬けにして燻した食品」とあるが、日本の商品の多くは「あたかも燻したかのような香りをつけているだけ」と名人は指摘する。

「三井ベーコン」の素材は地元産豚バラ肉。水洗いや血抜きはあえてしない。肉の重量の6%の岩塩に1%の砂糖、セージ、シナモン、ナツメグ、ローリエなどのハーブに黒コショウを調合しすり込む。ビニール袋に入れ寝かせること10日間。

「ここが難しいんだ」と眉間にしわを寄せるのは「塩抜き」。しょっぱ過ぎず、かつ絶妙の塩加減を残す具合に毎回苦労する。今の目安は3〜4時間。半日陰干しした後、ダンボール製燻煙箱でサクラのチップで燻すこと12時間。

「この前、火が強くて箱が燃えて“焼き豚”になっちゃったよ」とミスも豪快に笑い飛ばす。通常は庭で燻すが、雨の日に風呂場で燻したところ、タイルの目の間の黒カビが煙ですべてきれいに落ち殺菌効果を実証した。ただし匂いが強すぎ、家族には大不評。

とはいえこの三井ベーコン、「地元食材の美味しい活用」を研究する「あやしいおじさん探検隊」の仲間からも製造依頼が後を絶たない人気。シチューやポトフではだしを効かせ、シンプルな目玉焼きではカリカリとした脂身の旨さが絶品だ。

そんな“あやしい名人”の次の挑戦は「釧路産前浜コンブのつくだ煮」を極めることだと。
(取材・宿谷友美)

Photo:名人自慢の自家製ベーコン


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