名人 File Number 003 流しそーめん名人 |
年に一度、7月の日曜日、古川名人は厚岸町の山小屋「らんぷの家」でその技を披露する。
山小屋に屯田塾塾生と称し集合する“オヤジ"たちは、酒を酌み交わすだけじゃない。毎回ちゃんとテーマがある。12年間その伝統は続く。8年前のテーマは「水」。古川名人は考えた。小屋のそばに、美味しい井戸水がある。家には、もらい物のそうめんが山ほど余っている。「じゃあ井戸水で、流しそうめんをやるか」。それが始まり。
今年の夏も、山小屋に、老若男女100人余りが集まった。まず車で5分程のお寺で、大鍋いっぱいのお湯を、2時間半かけて沸かす。ゆでるポイントは、たっぷりのお湯に、少しの麺。麺は固すぎず、柔らかすぎず。最初の頃は、固まった麺を、山ほど捨てるハメになったこともあった。その作業を6鍋こなす。ゆであがった麺を抱えて、急いで山小屋に戻る。
井戸には、熊本産の竹で作った、3メートル余りのそうめん専用すべり台。丁寧に手入れされているから8年たった今も現役だ。いざ開始!そうめん達が泳いでいく様に、子どもたちはもちろん、童心にかえった“オヤジ”たちも歓声をあげる。
「麺もつゆも市販品。特別じゃない。でも水がうまいからウマイ。この井戸水が隠し味」。8年間、一度も雨にあたったことがないというのも、「水」の神様のおかげかも。
「皆の喜ぶ顔が嬉しいから続けてるだけ」。そう照れ笑いする名人は、きっと来年も、夏の厚岸に現れる。 (笹本香織)
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