子どもの頃からスミっこが好きだった。お留守番の一人ぼっちの部屋のスミっこ、押し入れの中のスミっこ。しゃがんで辺りを見渡すと、目の前がぐ―んと広がって、いつもの場所がずっとステキに見えるし、なくしたと思っていたおもちゃが、フッと出てきたりする。わたしにとって、そこは宝箱の中みたいに居心地のいい場所だった。
街のスミに隠れているステキなところ、こっそりやる気を燃やしている人、小さな声で手助けを求めている人たちをつなぐような情報誌を作りたい―そう思うようになったのも、そんな習性からだったかもしれない。
今回の“じゅう箱記者”は10人余り。大学生から主婦、保育士、会社員ら街の“無名人”たちが、休日を返上し初取材に挑戦した。取材のおしゃべりが楽しすぎて、ほとんどメモがとれなかったママさん。企画会議でネタがボツになったことにショックを受け「やっぱり僕にはできません」と弱音をはきながらもやり遂げた大学生。取材相手の言葉のひとつひとつに心を動かし、にわか記者たちはわずか数十行の記事にたっぷりの思いと時間をかけ原稿と向き合った。彼らが自分の中から引き出したそんな“やる気”は、紙面に登場する人物たちと同じ、街の宝物だ。
発行資金のために、広告集めに歩いてくれた仲間たちは「街に新しくて大きな力を育てる情報誌を作りたい」「紙面づくりを通してみんなの輪を広げたい」と行く先々でアツク語り、「そういうのいい!」「続けていってね」などと胸がいっぱいになるようなエールもたっぷりもらってきてくれた
小さな存在のわたしたちでも何かできるんじゃないか―そんな思いが、街のみんなの胸の中にあることが、どんどん分かってきた。
この重箱のふたは開いたばかり。でも、もう何か見えてきた。つっつき始めたばかりのスミっこに、わたしたちは今、とってもドキドキしている。
Photo:「わたしたちが作ってまーす」、じゅう箱のスミ編集部チャレンジ隊の仲間たち
(じゅう箱のスミ編集長・チャレンジ隊代表・佐竹直子)
Copyright(c)2001-2005 Challenge Network Vollunteer Action All Rights Reserved. |